講師:蒔苗昌彦
■検討着手優先順位をつけよう!
別項で述べたように、問題を分解してその構成要素を列挙していくと、その問題の規模が大きいほど、要素の数が増えます。ちなみに、当研修では、問題構成要素の列挙(原因の洗い出し)のみならず、何かしら必要事項を列挙する際には、必ず「ブレーンストーミング」の方法を活用します。
ブレーンストーミングの直後は、各受講者から列挙された諸要素は、書記によりエクセル表に箇条書きされただけの状態で、順不同となります。そのため、ブレーンストーミング終了後、検討を着手する優先順位をつけ、エクセル表を順位記述形式へと更新する必要があります。
たくさんの要素、項目が列挙された場合、一気に順位をつけることは非常に難しく、たとえ誰か一人が強引に順位をつけたとしても、問題解決に関わる人たちの間での合意形成は不可能なうえ、順位づけのことだけで打ち合わせが長引いたり紛糾したりし、問題解決に向かう道のりが長くなってしまいます。
そこで、たくさんの要素、項目について優先順位を決める際には、次の要領にて行うことで順位づけすることをお勧めします。
まず、 順位づけの進行役を1名、優先順位判断者を1名、書記(エクセルを操作する者)を1名を決めた上で、次の手順を反復する。
1. 優先順位判断者が、一番の上の行(以下「A行」と記)の記載内容を「基準行」とし、次行の記載内容を比較し、どちらのほうが優先されるべきか、他者と協議をせずに独断で迅速に意思決定する。
2. 決定の結果を、優先順位判断者は、「基準行が上(or基準行が下)」という言い回しで明言する。その際、理由等の説明は一切せず、結論だけ言う。
3. 異議がある場合にはその者(以下、「異議者」と記)は、即座に、「異議あり」と挙手と共に明言する。
4. 異議者は、異議の理由を述べる。
5. 異議者以外の者が、異議の理由に反論しない場合には、書記は②の逆を決定とし、
・それが「基準行が上」という決定ならば、エクセル表をそのままとしておく。(変更を加えない)
・それが「基準行が下」という決定ならば、基準行よりも上とした行を、基準行よりも上へ移動する。
6. 異議者以外の者が、異議者の理由に反論した場合には、進行役の指示の下、異議者と反論者との間でディベートを行う。
7. ディベートの内容を受け、進行役はその権限により、異議を却下するか、異議を採用するか決定し、明言する。
8. 書記は決定を受け、5と同じ対応をする。
9. 上述1から8を繰り返す。なお、その際、基準行との比較対象となる「次行」は、
・上述において「基準行が上」という決定となった場合には、1における「次行」の一つ下の行を比較対象とする。
・上述において「基準行が下」という決定となった場合には、基準行のすぐ下の行を比較対象とする。
10.以上を反復すると、いずれそれ以上基準行(つまりA行)と比較する対象の行がなくなる。そうなったら、A行より上に移動した行どうしで比較を行うこととし、その一番上に記載されている行を新しい基準行として、1から8を繰り返す。
11. 以上を反復すると、A行よりも上のブロック内で、順位が確定する。そうしたら、A行よりも下のブロック内にて、A行の次の行を新しい基準行として、1から8を繰り返す。
12. 以上の結果、すべての順位が確定する。
こうやって文章で説明すると非常に煩雑に思えるかもしれませんが、一度やってみればすぐ慣れ、以降スピーディに進めることができるようになります。ちなみに、昨今人気のある数十以上の女性が在籍するアイドルグループ(◯◯◯48等)で自分の好きなアイドルの順位を決めるアプリがあり、そのアプリは上述に似た方式が採用されているとの情報を、複数の受講者から聞きました。
なお、この段階で決めた着手優先順位は、あくまで最初の、いわば暫定的な順位としておきます。なぜならば、これ以降の検討・検証等によって、順番が入れ替わる可能性があるからです。また、この段階で精密に順番を決定しようとすると、順番決定のための所要時間が非常に長くなりその先に進むのが遅くなります。暫定扱いにすることによってスピーディに次の段階へ進むことがポイントです。