■職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方
当パートでは、職務分掌マニュアルの作成方法を詳細に述べる。それだけに、まずは、当講座が示す職務分掌マニュアルの基本構成を、よく理解して欲しい。
基本構成は表紙や目次といった、別種の冊子類とも共通する点を除き、次の通りとなる。
・パート1「総論」
・パート2「作業項目一覧表」
・パート3「作業手順書」
・パート4「資料」
この基本構成は、いかなる職務を対象にしても、同じとする。それにより、構成がバラバラであるのに比べ、たとえば管理職がその管理下にある複数の職務の職務分掌マニュアルを読もうとする際、読みやすくなる。また、ある人が異動し、別の職務に就いた際にも、前職でこの構成に見慣れていれば、読みやすい。※1 |
それぞれの具体的内容は、のちに、作成方法と一緒に詳しく説明する。が、とりあえず以下に概略を述べる。
・パート1「総論」(構成の第1要素)
職務に臨む上での心構え、背景となる知識、職務遂行上の基本方針、職務全体を制約する規定、その他、パート2以降(「作業項目一覧表」「作業手順書」「資料」)に入れるには不適切だが、職務分掌マニュアルのどこかには掲載しておくべき、と判断した情報を掲載。
これにより、パート3の「作業手順書」における記述が、個々の作業に関する情報へと絞り込まれるようにする。
ネガティブな言い方をすれば、パート3の「作業手順書」に作業以外の情報が流れ込まないようにするための、いわば防波堤の役割を果たすのも総論。
・パート2「作業項目一覧表」(構成の第2要素)
その職務が行う作業項目の一覧表。※2
まず、その職務がどれだけの数と種類の作業で構成されているか、理解してもらうために作成。作業項目を、作業種別の分類をした上で、一覧として一表で示す。必要があれば、補足資料として、さらに、作業の内容を概略として記した一覧表「作業概要一覧表」を作成する。
また、職務によっては、その作業の実施タイミングを表すスケジュール表をも作成する。
・パート3「作業手順書」(構成の第3要素)
個々の作業の手順に関する情報を掲載。一作業・一ページとし、行動や動作を時系列で箇条書きしたチェックリスト形式で記述。
規定として必ずその通りに実行する作業手順と、規定ではないが参考までに事例として示す作業手順の違いを、明確にした形で記述。
以下、前者を「規定手順書」と呼び、後者を「参考手順書」と呼ぶ。
手順の記述(一連の行動・動作で構成される記述)でないものの、その作業固有の規定がある場合も、「規定手順書」として掲載する。
参照すべき図表類その他資料は、すべてパート4「資料」へ掲載することとし、このパートは、文字情報に徹する。これは改訂を迅速に行うことができるようにするための編集上の手段であり、手順書に手順以外の情報が混ざり込むのを避ける手段でもある。
・パート4「資料」(構成の第4要素)
作業を行なう上で参照すべき情報で、図表や写真、伝票フォーマット、その他様々な文書類などを掲載。あえて一資料・一ページとして、「資料‐1」「資料‐2」「資料‐3」・・・と通し番号を振っていく。それにより、作業手順書のページから、参照すべき資料番号へ簡単に移ることができる。
※1:
記載されている内容が全く異なる内容であっても、基本構成が同じであれば、ずいぶん読みやすくなる。新しい職務に馴染もうとする際には、とても大切なポイントになる。
※2:
当講座でいう職務分掌マニュアルを丸ごと導入するつもりがなくとも、この作業項目一覧表だけでもいいから導入することをお勧めする。ただし、その場合には、「委任判定」(後述)は行わない。「委任判定」をすれば規定作業についての規定手順書を作成する必要性が発生し、結果、職務分掌マニュアルがほぼ丸ごと作ることと同じなり、丸ごと導入するつもりがないという意思に反してしまう。だからと言って、規定手順書は作成しないとすれば、規定と判定したのに規定(書)がないという矛盾した状態となる。だから、作業項目一覧表だけしか導入しない場合には、「委任判定」をしてはならない。