講師:蒔苗昌彦
■悪影響を減少できる対策を立案しよう!
悪影響を遮断する対策を講ずることができる場合、悪影響は完全ゼロになるわけですから、万々歳です。しかし、悪影響を遮断する対策を講ずることが、どのような問題においても可能、というわけではありません。そもそも技術上、不可能な場合もあるでしょう。たとえ技術上可能でも予算が確保できない場合もあるでしょう。技術上・予算上可能であっても、その対策によって別の問題が発生してしまうため実施できない場合もあるでしょう。
では、悪影響を遮断できる対策が可能でない場合、どうしたら良いのでしょうか。それは、悪影響を減少させる努力をすることに尽きます。産業界ではその歴史において、原因の悪影響を減少させる対策を無数に積み重ねてきました。
大人ならば誰でも分かる・知っているはずの事例を紹介しましょう。それは自動車等のガソリンエンジンの事例です。皆さんご存じの通りガソリンエンジンは、シリンダー内の圧縮し気化したガソリンをプラグのスパークによる点火で燃焼させ大きな動力を得る仕組みです。なぜガソリンエンジンが大きな動力を出せるかと言えば、この燃焼が一瞬のうちに起き、小さな空間で大きな爆圧を生むからです。いわば爆発です。爆発の音は非常に大きく、その音をそのまま外部に響かせては、うるさくて商品化できません。そこで、消音装置としてマフラーを取り付け、エンジンカバーを取り付け、商品化可能なレベルにまで外部に漏れる爆発音を小さくしました。
この事例を「問題」「原因」「悪影響」「遮断」の関係へと構造化すれば、、、
・「問題」は「(開発者の立場からすれば)そのままでは商品化できない」
・「原因」は爆発(爆発音)
・「悪影響」は「うるさい」
となります。
それでは、悪影響を遮断できるか?と問えば、答えはnoです。なぜならば、燃焼するためには空気(酸素)が必要であり燃焼後の排気も必要なため、外気との遮断はできないからです。爆発あっての大きな動力なだけに、問題と原因はいわば一体の関係にあります。だから、悪影響を遮断することができないわけです。悪影響を遮断できない以上、あとは悪影響を減少させる対策を講じるのみです。そこで、悪影響を減少させる対策として、エンジンカバー、マフラーなどの消音装置を取り付け、そして改良を重ね、少なくとも車検が通った四輪車は、今や誰もが実感できるほど静かになりました。
悪影響の遮断とは悪影響を完全ゼロにする行為ですが、悪影響の減少とは、悪影響を限りなくゼロに近づける行為というわけです。
<ポイント>
・悪影響を遮断する対策が可能な場合、悪影響を減少させる努力を続ける。
・産業界はその歴史において、原因の悪影響を減少させる対策を無数に積み重ねてきた。