■職務分掌の定義

職務分掌とは?

「分掌」の意味を「役割分担」とすることを前提とした場合、職務分掌の定義は「『職務』ごとに割り振られた役割分担」として妥当だと私は思う。しかし、世間一般では、その定義や、解釈、扱い方にバラつきがある。どのようにバラつきがあるか全て列挙すると文字数が過多になるので、一例をあげると次の通り。

1.組織を構成する各部門や各部署に割り振られた役割(との解釈)
2.部長や課長などの各職位に与えられた基本的な役割(との解釈)
3.「業務分掌」と同義としたり、ニアリーイコールとする(扱い方)

さて、「名は体を表す」との諺が示唆するところを前提とすれば、「職務」という言葉に、「部門」や「部署」のことを指すような意味づけをすることは避けるべきである。したがって、上記1の解釈は避けるべきである。

また、「職務」という言葉に、「職位」のことを指すような意味づけをすることは避けるべきであり、したがって上記2の解釈は避けるべきである。

さらに「業務」という概念と「職務」という概念を同一とすべきではなく、したがって上記の3の解釈も避けるべきである。

つまり、職務分掌とは、その名の通りあくまでも「職務の分掌(役割分担)」とし、「部門の分掌」としても「職位の分掌」としても「業務の分掌」としても扱うべきではないと判断して妥当であろう。

以上を前提とした場合、「職務」という概念を明確にする必要が出てくる。この用語の定義文は何通りかの表現が可能であるゆえ、むしろ現状においてそれを「職務」と呼んで差し支えない仕事上の役割を確認することを通じて、その概念を明確にするほうがよいだろう。

れは、たとえば、電車運行業務における「運転士」「車掌」「運行指令」「保線」「車両点検」等、旅客機運航業務における「機長」「副操縦士」「客室乗務員」等である。これらを職務と呼んでも差し支えなかろう。

また、内閣を構成する職務として、「総理大臣」およびその他分野別の大臣が定められるが、たとえばロッキード汚職事件において「総理大臣の職務権限」がキーワードとなったことが、「大臣は職務である」と言って差し支えないことを法的な観点からも裏付けている。

ちなみに、職務の責任は、その職務に就いた人間(個人)が負い、その責任を全うするために権限が与えられることになる。その職務を設定したことや、職務に就いた人間に対する監督責任などは別として、職務の責任は組織や部署の集団責任ではなく、あくまでもその職務に就いた人間(個人)が責任を持つのである。だからこそ、ロッキード汚職事件において「総理大臣の職務権限」をふるい贈賄者に便宜を図ったとの理由で、総理大臣という職務に就いていた個人(故・田中角栄氏)の責任が問われたのである。

以上からして、前述の1、2、3のような解釈や扱い方は避けるべきとの考え方は強化されたと思う。

ちなみに、なぜ、私は、職務分掌という用語に、マニュアルという用語を付け足した造語を使うのか? 変に思う人も多かろう。が、その理由は、講座本文にて説明する。

■講座「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」目次


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