問題解決アプローチ003

講師:蒔苗昌彦

「問題」の名称を明確にし、問題の範囲を特定しよう!

問題に取り組むにあたり、まずはその問題の呼び方、つまり名称を明確にすることで、その問題の範囲を特定しましょう。

このように述べると、「問題を解決することが求められるのであって、その名称なんてどうでもよい」「名称を考えている時間があるならば、解決方法を考えることに時間を割きたい」などと思う人も現れるでしょう。その問題が大して重要ではない問題ならば、それでも良いかもしれません。

しかし、それが大きく複雑な問題となると、問題に関係する社員数・部署数、問題に影響を受ける社員数・部署数が多くなります。もし、名称を明確にしないことで問題の範囲を定めていなければ、社員間でその問題について指摘し合う・語り合う際に、類似・隣接しているものの別問題として扱うべき問題とどのように違うのか不明となり、問題に関する認識に支障が出ます。社員の間、管理職、経営者の間でその問題に対する認識がズレている時には、必ずと言ってもいいほど、問題解決行動は停滞します。

また、結果的にその問題の解決が不可能と判定した場合、その問題が未解決であることを正式な記録として残しておく必要があります(※別項にて解説)が、その場合にも、名称が明確でなければ、残した記録を後で調べようとろうとする際に、その問題が過去にあったことを見落としてしまう可能性が大きくなります。

名称は「名は体を表す」ように、可能な限り、問題の範囲が、その名前によって見当がつくような名称にします。そのためには、短い説明文のようになり文字数が多くなりますが、仕方がありません。

例えば、

・事例01.「装置○○の制御盤Aで発生する熱を、夏季であっても○○度以上にしないために部品Bのグレードを上げる必要があるが、原価が大幅上昇してしまう件」

・事例02.「製品○○ラインの時間あたり生産数を1.5倍に引き上げたく、それは設備仕様変更で可能だが、操作の難易度が増す可能性が懸念される件」

・事例03.「ピーク混雑時の車両1両あたりの平均乗車率を○○パーセント下げたいが、プラットホームの滞留人数が○○パーセント上がるため、その安全対策が必要となる件」

・事例04.「初診受付待ち時間が○分以上になることが常態化し、それを短縮したいものの現在の人員数では不可能と予想される件」

といったような長い文になっても仕方がありません。が、これらのように長い場合、次のような短縮文をメインタイトルとした上で、長い文をサブタイトルとして付帯させる方法があります。

・事例01.「装置○○制御盤Aの熱対策に伴う原価上昇」(に関する問題)

・事例02.「製品○○ラインの仕様変更に伴う操作難易度上昇の可能性」(に関する問題)

・事例03.「平均乗車率とプラットホーム滞留数過剰の相関」(に関する問題)

・事例04.「初診待ち時間短縮のため要員不足」(に関する問題)

ちなみに、これらの短縮タイトルを見てわかるように、もしこの短縮タイトルだけしか表示されていないとしたら、その問題の内容についてまだ何も知らない人がそれを見て、それぞれの問題の中に潜むジレンマが伝わらず、問題の解決が容易かのような誤解を招く可能性が出てきます。だから、こうした短縮タイトルをメインタイトルとする場合には、サブタイトルとのセットで表記しましょう。短縮されたメインタイトルはいわば便宜的なタイトルというわけです。

この形で両者を組み合わせると、次のようになります。

・事例01.
「装置○○制御盤Aの熱対策に伴う原価上昇」(に関する問題)
〜装置○○の制御盤Aで発生する熱を、夏季であっても○○度以上にしないために部品Bのグレードを上げる必要があるが、原価が大幅上昇してしまう件

・事例02.
「製品○○ラインの仕様変更に伴う操作難易度上昇の可能性」(に関する問題)
〜製品○○ラインの時間あたり生産数を1.5倍に引き上げたく、そのためには設備仕様変更で可能だが、操作の難易度が増す可能性が懸念される件

・事例03.
「平均乗車率とプラットフォーム滞留数過剰の相関」(に関する問題)
〜ピーク混雑時の車両1両あたりの平均乗車率を○○パーセント下げたいが、プラットフォームの滞留人数が○○パーセント上がるため、その安全対策が必要になる件

・事例04.
「初診待ち時間短縮のため要員不足」(に関する問題)
〜初診受付待ち時間が○分以上になることが常態化し、それを短縮したいものの現在の人員数では不可能と予想される件

このように「〜」の記号を活用し、それ以降がサブタイトルであることを示唆するといいでしょう。


【ポイント】

・問題に対する経営者・管理職・現場社員の共通認識を得るために、その問題の名称を明確にし、その問題の範囲を特定すること。

・前項により、類似、隣接しているものの別問題として扱うべき問題と、どのように違うのかが明確にする。

・問題に関する記録を残すためにも、名称が明確である必要あり。

・問題の内容によっては、長い名称であっても仕方ない。

・問題の名称が長くなる場合、短いメインタイトルをつけた上で、長い名称をサブタイトルとして付帯させる。


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