問題解決アプローチ012

講師:蒔苗昌彦

対応できなかった問題構成要素の記録を残そう!

別項での説明でご理解頂いたように、問題を分解することによって、問題構成要素が数多く出てきます。そして、着手優先順を決めた上、有効な対策をそれぞれに講じ、いわばシラミ潰しのように対応することを、私はお勧めします。

とは言え、問題構成要素の特性次第では、どれだけ知恵を絞っても対策が立案できなかったり、対策立案ができても予算の都合で実行できなかったり、経営者の承認が下りなかったり等様々な理由により、対応できない場合もあります。つまり、元々の問題(もしくはその問題構成要素)が解決しない場合もあり得えます。そうした場合、問題解決の担当者としては、解決に向けて一生懸命頑張ってきただけにガックリすることになるでしょう。会社としてはその問題の解決を諦め、未解決のまま終止符を打つことになります。

世の中には、解決できなかった問題は汚点として闇に葬ってしまおうとする人がいるものですが、そうした行為は、少なくとも企業内では避けるべきです。解決できなかった問題(もしくは問題構成要素)は、未解決案件として正式な記録を残し、社内で共有できるようにしましょう。いわばCold Case Files として保管しておくのです。

もし未解決案件を共有していない場合、その問題があるにもかかわらずその問題を知らない人が、その問題によりミスをしたり事故を起こしたりする可能性があります。

喩えて言えば、道路に陥没している箇所が発見されたものの当面修復することができない場合、当然、その場所が危険であることを示すためレッドコーンを置くなりして皆に注意喚起を図ることでしょう。もしそうしていなければ、その問題(道路陥没)を知らない人は陥没箇所に落ちるという事故を起こすことでしょう。だから、未解決の問題は、社内で共有しなければならないのです。

また、何年か経ち、同じ問題に改めて取り組もうとする人が現れた場合、過去の取り組みが、たとえ未解決の結果となっていても、そのCold Case Fileの情報は参考になります。

ポジティブに捉えれば、「或る問題がどうやっても解決できない」ということ判明することは、別の道を探るための一歩になるとも評価できます。消去法として考えれば、自分たちに出来ることを絞り込むための一里塚とも言えます。たとえ未解決となっても、その問題を決して闇に葬ることなく、社内で共有することは非常に重要なのです。


<ポイント>

・解決できなかった問題を汚点として闇に葬ってはならない。

・未解決案件は正式な記録を残し社内または担当部署内で共有できるようにする。

・過去の取り組みは、たとえ未解決の結果となっていても、のちに改めて問題解決に取り組む際の参考になる。

・再度その問題の解決に取り組むことがなくとも、「こういう問題が未解決のままなのだ」という認識を共有し危険回避をする。

・或る問題がどうやっても解決できないと判明することは、別の道を探るための一歩になる。できることを絞り込むための一里塚だ。


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