問題解決アプローチ013

講師;蒔苗昌彦

問題についての情報管理の仕組みを作り運用しよう!

別項(前項)で述べたように、対応できなかった問題(未解決案件)についても記録を残さなければなりません。もちろん、解決した問題についても記録を残さなければなりません。そのためには、そもそもどういう問題が報告されたのか、記録していかなければなりません。また、いつでも問題を報告できるようにしておかなければなりません。

この考えを実現するためには、問題についての情報管理の仕組みを作り、運用し続けていく必要があります。それには、会社の正式な情報管理の規程の一環として、問題に関する情報の管理の仕組みを定めます。

その規程においては、まず問題があると思った時点で、そう思った人は必ず上司へ報告をする義務を定めます。上司がそれを検討し、解決の対象とすべきと判断したら、経営者に上申します。そして、経営者は可否を決定します。可としたら、その問題解決担当者を任命し、解決に当たらせます。問題解決担当者は、本来の職務との兼務でも構いませんが、その場合には、問題解決に使う時間を上司が正式に与える必要があります。そして、効果のある対策が立案できたら、問題解決担当者→上司→経営者の流れで承認を受け、対策を実行します。当然、実行結果は検証し、修正すべき場合は修正します。

以上の流れ自体は誰でも了解できるでしょう。むしろ、当項で強調したいのは、この流れを実現するためには、問題を報告するための正式な書式、いわば「問題報告用紙」の発布と、問題を発見した・問題に気づいた社員はこの用紙を提出する義務を規程とすることです。
※ここで言う「用紙」とは電子文書の書式も含む。

一般にしばしば見かけますが、何かの事故がありそれを調査したところ、事故に関連する現場の人間が「実は以前から問題があると思っていたのですが、、、」と言い出す場合があります。こうした事態は回避しなければなりません。「問題報告用紙」の発布と、問題を発見した・問題に気づいた社員がこの用紙を提出する義務を規程とすることで、こうした事態を回避するのです。

もちろん、口頭やeメール等による問題の報告も、日頃から行うべき「報連相」の一環として行うことが大事ですが、それはそれで行うとして、少なくとも重要な問題は「問題報告用紙」という文書にて正式に会社に提出すべきです。これにより、問題解決担当者→上司→経営者の流れで問題が知らされ、解決に向けての進捗状況、結果についての情報が共有されます。

この「問題報告用紙」は、担当者を決めてその人が管理します。そして、その担当者(いわば問題情報総合管理担当者)は、問題事項をリストとしてエクセル表に記載し、最低でも毎年1回は更新し、経営者が会社全体を見渡して問題が何件報告され、そのうちどれが解決済なのかor未解決なのか、を把握できるようにしておきます。また、個々の問題解決に掛かった費用も、右端のセルに入れるようにし、その列の最下段に合計費用が表示されるようにしておきます。上述にて「最低でも毎年1回は更新」としたのは、年次予算と問題解決総費用、予算が足りないために解決を保留にしている問題、を対照できるようにするためです。

この担当者は専任である必要はなく別の職務との兼任で構いませんが、総務部等のスタッフ部門にその職務を置くのが適切です。世の中には、総務部が実質的には庶務部のようになってしまっている企業がありますが、本来、総務部は会社の総司令部の役割を果たすべきです。それゆえ、私は、たとえ直接部門の現場実務の問題であっても、その取り組み情報については総司令部たる総務部が総合的に管理するのが適切、と考える次第です。


<ポイント>

・問題についての情報管理の仕組みを作り、運用し続けていく。

・会社の正式な情報管理の規程の一環として、問題に関する情報の管理の仕組みを定める。

・問題を報告するための正式な書式、いわば「問題報告用紙」を発布する。

・問題を発見した社員、問題に気づいた社員に「問題報告用紙」を提出する義務を課し、それを規程とする。

・文書管理等の担当者は、問題事項のリストをエクセル表で作り、経営者が会社全体を見渡して問題がどれほど報告され、そのうちどれが解決済なのか/未解決なのか、を把握できるようにしておく。

・個々の問題解決に掛かった費用も入力し、年次予算と対照できるようにする。


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