問題解決アプローチ017

講師:蒔苗昌彦

判断の基本を理解しよう!

問題解決において、「判断」を正しく行うことは必須です。これは、普段から皆さんは十分に認識しているでしょう。そこで「判断」についてその基本を理解しておきましょう。

人間は「言葉」、そして「言葉」によって顕在化・認識される「(単一の)概念」を組み合わせて「(単一の)判断」を行います。つまり、複数の単一概念を組み合わせて「(単一の)判断」を行います。そして、複数の判断を連続させて「思考」を展開します。そして、思考の展開の結果、そのまとめとして、新しい概念を定義したり、既存の概念の再確認をしたり、新しい判断をしたりします。

以上から、「概念」とは判断や思考のパーツ(部品)、と言うことができます。もし部品に不備があれば、部品を組み立てて出来上がる製品に不具合が発生するのと同じように、概念が不明確であれば、概念を組み合わせて行う「判断」も不明確となります。だから、判断・思考をする前に、判断・思考のパーツとなる個々の概念を明確にすることが必要です。そのためにも、企業活動やその他組織活動においては、社内・組織内で正式に定義された概念、そして業務特有の言葉、機械器具の名称、作業の名称等は、業務上の正式な用語として明文化し、業務用語集として発行することをお勧めします。

もし、日頃から、しばしば、社員間で、或る事柄について呼び方や名称が食い違う、用語解釈が異なる等の事態が発生しているようであれば、それは問題です。情報伝達や打ち合わせの効率が悪いのはもちろん、社員間のやりとりによる行き違いが原因となり最悪事故の発生につながります。こうした問題への対策が、業務用語集の発行というわけです。

業務用語集は、用語の解釈や名称の食い違いを解消するために発行するので、「統一用語集」という名称にしても構いません。会社の社員数が多ければ多いほど、業務用語集(または統一用語集)を発行し改訂も含めた運用管理をしていくことの効果が大きくなります。

当研修(問題解決行動促進研修)は、専門情報・専門知識・専門技術等が十分揃っているにもかかわらず、問題解決の取り組みが停滞している場合にお引き受けしている次第ですが、こうした場合には、その問題が何であれ、必ずと言ってよいほど、社員間で用語の解釈の食い違いがあります。ですので、もし私に当研修を依頼しないことになったとしても、業務用語集(または統一用語集)を発行し改訂も含めた運用管理をしていけば、貴社における問題解決の取り組みはスムーズになるでしょう。

次に、「概念」を組み合わせて行う「判断」について述べます。

まず、「(単一の)判断」の基本形式を説明します。その(単一の)判断の形式とは、次の例のような基本形式となります。

例:「その問題は、重大である」

この例においては「その問題」という主辞(主語)と、「重大」という客辞(客語)を、「は~である」という繫辞が結びつけています。「その問題」と「重大」がそれぞれ(単一の)概念に該当します。

この「(単一の)判断」の基本形式は低学年の小学生であっても理解していて、日頃から使い慣れていると思います。小学校低学年レベルの例をあげるならば、「猫は可愛い」「カレーライスは美味しい」「ゲームは面白い」などとなります。小学生が「猫」「可愛い」「カレーライス」「美味しい」「ゲーム」「面白い」それぞれの(単一の)概念を十分に理解しているから成り立つ事例です。

もし、小学生に対し、小学生レベルでは理解不能な概念を示した上で判断を迫っても、判断の部品である概念をそれぞれ理解不能な以上は、判断を確立することはできません。このことは、大人である社員においても全く同じであり、社員に理解できない概念を示した上で何かの判断を迫っても、判断の部品である概念を社員がそれぞれ理解できない以上は、社員は判断を確立することはできません。だからこそ、業務用語集(または統一用語集)を発行し改訂も含めた運用管理することの重要性を訴えた次第です。

さて、「判断」について注意を喚起したいのは、上述した判断の形式(主辞と客辞を繋辞でつなぐ形式)のこと自体ではなく、「前提」がない判断と、「前提」がある判断の違いについてです。

判断は、
・前提あっての「判断」 (「仮言判断」と呼ぶ)
・前提なくしての「判断」(「定言判断」と呼ぶ)

に分かれます。

また、前提次第で判断内容が異なる二者択一(または三者以上の択一)の判断を、「選言判断」と言います。「選言判断」は二つ以上の「仮言判断」で構成されます。

企業活動に行われる判断は、たいていが「仮言判断」や「選言判断」であり、何かしらの前提があって成り立つ判断のはずです。安全衛生、法律、予算は、企業活動の大前提となるため、この観点から見れば、たいていどころか、すべての判断が「仮言判断」や「選言判断」となるはずです。それにもかかわらず、前提を掴まず・前提を明示せずに判断を示すようなことがあれば、あたかもそれが「定言判断」であるかのような誤解を与え、社内が混乱します。社外の人も迷惑するかもしれません。

「選言判断」(二つ以上の「仮言判断」からの択一選択)の最もわかりやすい事例を示しましょう。

或る新しい設備を工場に導入することを検討中、と想定した場合、、、

・仮言判断A「毎月の保守費用が100万円未満に抑えられる(と予想される)のであれば、(その設備を)購入する」

・仮言判断B「毎月の保守費用が100万円を超える(と予想される)のであれば、(その設備を)購入しない」

といった事例です。つまり、Aにおいては「毎月の保守費用が100万円未満に抑えられる(と予想される)」が前提で、「(その設備を)購入する」が判断。Bにおいては、「毎月の保守費用が100万円を超える(と予想される)」が前提、「(その設備を)購入しない」が判断です。

最もわかりやすいとしたこの事例をよく見て頂ければご理解頂けると思いますが、もし仮言判断Aだけを示しても、仮言判断Aの文脈から、仮言判断Bを暗示していることになります。だから、この事例において、本当に、仮言判断AとBの選択肢しかないのであれば、仮言判断Aだけを示すのでも構いません。

しかし、たとえば「毎月の保守費用+リース費用が200万円未満ならば、リースをする」という仮言判断Cがあり得るならば、Aだけを示してはCの選択肢が隠れてしまうため、ABに並びCも示す必要があります。

このCは、「毎月の保守費用+リース費用が200万円を超えるならば、リースをしない」という仮言判断Dを暗示しています。そのため、もしACともにそれぞれの前提を満たさなかった場合には、購入もしないしリースもしない、すなわち、「その設備を導入しない」という結論が導かれます。逆に、ACともにそれぞれの前提を満たした場合には、AかCいずれかの選択をすることになります。

いかがでしょうか? こうやって文章で解説すると何やら難しいことのように見えるかもしれませんが、皆さんは普段からこうした判断をしているはずです。その証拠に、もし会社の誰か権限の強い人が、前提なしで、いきなり、ただ「その設備を導入するぞ」と定言判断かのように断言したら、皆さんは困惑することでしょう。

ともかく、別項でも述べたように、企業活動において、安全衛生や法律、予算などは絶対の大前提であり、他にも様々な前提がつきまといます。だから、企業内の問題解決における判断は、どれもが仮言判断・選言判断であるはずと思い、必ずその「判断」の前提を明らかにしましょう。

ちなみに、別項にて「判断」をしたならばその「根拠(or理由)」を明らかにするように述べましたが、「(判断の)根拠」と「(判断の)前提」はどう違うのでしょうか? 上記の設備導入の事例のうちの仮言判断Cを用いてその形式を説明するならば、、、

・「毎月の保守費用+リース費用が200万円未満ならば、リースをする。なぜリースするのかと言えば、その設備の導入によってその工程の作業担当者を○名減らすことができ、それにより削減できるその工程の毎月の人件費は、保守費用+リース費用を下回るうえ、要員数が不足気味の他の工程に要員を回せるから」

といったような形式になり、

・「毎月の保守費用+リース費用が200万円未満」が前提
・「リースをする」が判断
・「その工程の作業担当者を○名減らすことができ、それにより削減できるその工程の毎月の人件費は、保守費用+リース費用を下回るうえ、要員数が不足気味の他の工程に要員を回せる」が判断の根拠(この場合は「根拠」よりも「理由」と言ったほうがしっくりくるかもしれません)

に該当します。


<ポイント>

・「概念」は、判断や思考のパーツ(部品)となる。

・部品に不備があれば、部品を組み立てて出来上がる製品に不具合が発生するのと同様に、概念が不明確であれば、概念を組み合わせて行う「判断」も不明確となる。

・だから、判断・思考をする前に、判断・思考のパーツとなる個々の概念を明確にすることが必要。

・企業活動やその他組織活動においては、社内・組織内で正式に定義された概念は、業務上の正式な用語として明文化し、業務用語集(統一用語集)として発行することがお勧め。

・企業活動において、安全衛生と法律は大前提であり、他にも様々な前提がつきまとう。

・前提を掴まず、前提を明示せずに判断を示すようなことがあれば、前提なしに成り立っている判断であるかような誤解を与え、社内は混乱する。


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