パート2・セクション4「作業項目一覧表の“空表”の作成」

4‐1「基本的な考え方」

当講座における職務分掌マニュアル作成法では、職務遂行の上で行う諸々の仕事をすべて「作業」と呼ぶことにする。その上で、一つの職務に含まれる「作業」の項目をすべて洗い出し、「作業項目一覧表」を作る。それを見れば、その職務がどのような作業で構成されているのか把握可能となる、一枚の表だ。

「作業項目一覧表」は、職務の作業目録と呼ぶこともできる。また、職務の明細書と呼ぶこともできるだろう。

ところで、なぜ、ステップ2では「作業項目一覧表」そのものを作らず、わざわざ一つのステップを踏んでまで、その“空表”を作ることに専念するのか?

実は、旧来の一般的な職務分析手法で、「先に作業の洗い出しを行い、後からそれを分類する手法」がある。いわば「帰納法」的なやり方であるが、その手法だと、洗い出された作業の数が非常に多い場合、いざ分類する段になって分類しきれず、プロジェクトが頓挫する可能性が出てくる。たとえ頓挫しなくとも、時間が掛かってしまう可能性がある。
たしかに、「分類」という行為は、本来、先に分類する対象の要素が列挙されていることが前提となる。
しかし、当講座の職務分掌マニュアル作成法においては、職務に精通する人の知識や勘を頼りに、まずは「分類」を仮定してしまうという方法を、あえて取る。

このやり方は、一見、「作業項目一覧表の“空表”を作る」という余計なステップを踏んでいるように思えるかもしれない。
しかし、これによって、やみくもに作業を洗い出してみたものの、その後どう分類していいか困ってしまう、という事態を避けることができるのだ。急がば廻れ。焦らずに、まずはこの空表作りを行なって頂きたい。


4‐2「毎日型か年度型か確認する」

作業項目一覧表の“空表”を作るためには、作業項目の分類を、仮設定する必要がある。
そのためには、まず、その職務が「毎日型職務」か「年度型職務」のいずれに該当するか判断する。なお、これら二つの用語は、当講座進行上の便宜的な用語である。

「毎日型職務」とは、「その日のうちに済ませなければならず、かつ、毎日のように行わなければならない作業がほとんどの職務」を指す。
ただし、そういった職務でも、週、月などの周期で行う作業も、いくつか含まれていると思う。が、そうであっても、「一日のうちに済ませなければならず、かつ、毎日行わなければならない作業がほとんど」であれば、「毎日型職務」として扱う。

「年度型職務」とは、「年度計画に基づき、半期、四半期、月、週、毎日の作業へと落とし込んでいくような職務」を指す。そういった職務でも、毎日や、週、月などの周期で行う作業が、含まれていると思う。しかし、年度計画から落とし込んでいく以上は、半期以下の周期で行う作業がどれだけ多く含まれていても、「年度型職務」として扱う。


4‐3「作業の分類」

職務に精通した人の頭脳の中には、すでに作業項目が列挙されているとの前提に立ち、それらを分類し、名称をつける。分類は、作業の周期の分類と、作業の特性の分類、2種類を行う。※1 つまり、マトリクスの分類となる。


4‐4「作業項目一覧表の“空表”の作成」

空表は、作業周期の観点からの分類を横列とし、作業特性上の分類を縦列にするのがお勧めである。

どのような職務であっても、 なるべく一枚の表にすること。文字を小さくしてでも、一枚の表にする。なぜならば「一枚で概要が掴めること」が、作業項目一覧表の利点だからである。そのため、A3サイズがお勧めである。作業項目洗い出しが完了した結果、あまりにも余白が大きい場合は小さいサイズへの変更をするのも手だが、先々も含め複数の職務について職務分掌マニュアルを作成する場合は、職務によってA3だったり、A4だったりとバラつきがあるのは避けるべきなので、余白が多くてもA3にすることをお勧めする。

作業項目一覧表空表

4‐5「プロジェクトの進捗に応じた調整」

「作業項目の分類」とはいえ、この段階では、仮設定となる。だから、ステップ3で作業項目の洗い出しを進める中、分類項目の追加、統合、削除が起こる可能性はある。が、だからといって、この“仮設定”をいい加減にすることなく、職務に精通した人の頭脳にある情報を基にしっかりと分類設定をして欲しい。この“仮設定”の的中度合いが高いほど、後のステップがスムーズに進むことになる。

なお、“仮設定”をどれだけ真剣に行っても、いざ作業項目洗い出しの段になって、どの欄にも入らない作業項目が出てくる可能性は残されている。また、その職務本来の役割ではないものの、現実には行わざるをえない作業項目が出てくる可能性もある。その場合の受け皿として、縦列の一番右に、「その他」欄を設けておく。


※1:
厳密には「周期」も作業の特性のうちだが、あえて独立して扱う。したがって、ここで言う「作業特性」は、「周期を除く特性」という意味になる。


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