■職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方
12‐1「基本的な考え方」
前章までのステップを全て行うことにより、職務分掌マニュアルの構成要素が揃い、冊子化が可能となる。
冊子化におけるポイントは、「改訂が容易な形で冊子化すること」に尽きる。実際には、片面印刷2穴バインダー綴じにて冊子化するのが、最も改訂が容易である。なぜならば、改訂ページだけを差し替えることができるからだ。
ただし、2穴バインダー方式には、紙の穴の部分から亀裂が入ってページが取れてしまう可能性があるので、用紙を厚手にするか粘りのある紙質にする等の対策が必要がある。これは明らかに短所であるが、差し替えを容易にするためには、この短所を承知の上で実行するしかない、と私は判断する。※1
なお、全面改訂が頻繁に発生する可能性があり、かつ、発行部数が膨大な職務分掌マニュアルについては、バインダー方式ではなく、印刷製本をし、改訂の際には冊子丸ごと差し替えてしまったほうが、改訂管理が容易である。
12‐2「構成」
職務分掌マニュアルの冊子化に当たっての章立ては、冒頭に総目次を置いた上で、パート1「総論」、パート2「作業項目一覧表」、パート3「作業手順書」、パート4「資料」の4つのパートで構成する。
「スケジュール表」を作った場合には、パート2の中に入れる。
「規定手順書」と「参考手順書」は、パート3「作業手順書」に入れる。
パート3の手順書の順番は、作業項目一覧表で定めた番号順とする。その結果「規定手順書」と「参考手順書」が交互に入りくむことになっても仕方ない。それでもよしとする。ただし、必ずページの右肩に「規定」もしくは「参考」と記し、両者の違いを明確にすること。
パート1、2、3のどれにも該当しないものは、パート4「資料」に入れる。
パート3は、1つの作業項目に関する情報だけで1ページとする。パート4も、1つの情報で1ページとする。たとえ、それによって各ページの余白が多くできても、なるべく1手順・1ページ、1資料・1ページとする。なぜならば、この仕様のほうが、改訂の際の差し替えが容易だからだ。また、人間が情報を得ようとする時には、1回に1つのテーマへ意識を集中したがるもので、それに応えるためでもある。
12‐3「目次」
目次は、全体の冒頭に設ける「総目次」と、各パートの最初の「中扉」に記載する「パート目次」の2種類とする。※2
「総目次」には、各パートの名称と、一ランク下の項目名称だけを記載する。さらなる詳細は「パート目次」に記載する。これにより、本文改訂に伴う、目次差し替えの手間を軽減する。
通常の印刷製本をして、改訂の際には丸ごと交換する場合には、目次差し替えの手間を考慮する必要はない。「総目次」は各パートの項目だけではなくそのページの範囲も記し、各パートの中身を記してもよい。ただし、総目次が見開き2ページを越えると、全容が掴みづらくなる。そのような場合は、「総目次」は概要的にし、詳細項目は「パート目次」にて記載する。
12‐4「ページ番号」
ページ番号は、片面印刷2穴バインダー綴じとした場合には、パート単位でのページ数とする。職務分掌マニュアル全体を通してのページとはしない。これも、ページ差し替えの手間を考慮しての対処策である。
なお、通常の印刷製本とする場合は、この対処策は不要である。職務分掌マニュアル全体を通してのページを打つ。
12‐5「印刷」
片面印刷2穴バインダー綴じの場合、発行部数が少ない場合は、印刷と言っても、社内のコピー機による複写で十分となる。
しかし、事務局を支援する職務分掌マニュアル管理部署の要員数にもよるが、たとえ片面印刷2穴バインダー綴じであっても、コピーとファイリングを外注したほうが、効率良い場合もある。
発行部数が多い場合には、片面印刷2穴バインダー綴じであっても、コピー機による複写ではなく、印刷に掛けたほうが経費を抑えることができる。いずれにしても、要員と予算を考慮し、適切な印刷方法を選択して頂きたい。
12‐6「製本」
片面印刷2穴バインダー綴じとした場合は、第1版を発行する段階で、コピー機で印刷された紙に2穴を開けた上で、ページ順にバインダーに綴じるという手作業が発生する。発行部数に対して、事務局を支援する職務分掌マニュアル管理部署の要員数にゆとりがある場合には、この手作業が可能である。
しかし、発行部数が多くなってくると、たとえ要員数にゆとりがあっても、外注したほうが効率よくなる。
全面的な改訂が頻繁に発生する可能性があり、かつ、発行部数が多い職務分掌マニュアルについては、通常の印刷製本をし、改訂の際には丸ごと差し替えてしまったほうが改訂管理が容易である。
12‐7「表紙」
片面印刷2穴バインダー綴じとした場合は、バインダーを開けた後に一番に登場する紙に、「職務分掌マニュアルの名称」、「第○版」という版数、「最新改訂の年月日」「管理部署名」を記載する。それを正式な表紙とする。バインダーの表面や背表紙には「職務分掌マニュアルの名称※3」だけ記す。
通常の印刷製本をする場合には、製本上の表紙に、「職務分掌マニュアルの名称」、「第○版」という版数、「発行年月日」を掲載する。
12‐8「版下情報の管理」
以上によって揃った版下情報は、一元管理する。プロジェクト期間中は、プロジェクト事務局が管理し、プロジェクト解散時、プロジェクト事務局から総務部(もしくはそれに類似する部署)の職務分掌マニュアル管理担当職務へ引き継ぎ、永続的に管理する。
12‐9「電子化する場合」
職務分掌マニュアルを電子化し、社内向けWebサイトで閲覧できるようにする場合は、上述までの2、3、4、8、9の中に、電子化においても参考となる点があると思う。電子化に的を絞った記述は当講座では行わないが、いったん紙媒体で作成した後、原稿をPDFへ移行する形で展開できると思う。
※1:
私はまだ利用したことがないが、市販のバインダーには、2穴方式のみならず、3穴、4穴もある。3穴も4穴とも、2穴並みの枚数が綴じることが可能なリングファイル形式のようである。さらには16穴もあるようだが、2穴・3穴・4穴ほどの枚数は、綴じることはできないようである。
いずれにしても、穴の数が多いほど、ページが取れてしまう確率が少なくなるので、利用を検討してみる価値はある。
※2:
総ページ数がかなり少ない場合には、中扉を挿入するまでもないかもしれないが、後にページが徐々に増えていく可能性を考えれば、挿入するに越したことはない。
※3:
職務分掌マニュアルにおいては、職務分掌マニュアルの名称は、すなわち、職務名称が伴う名称となる。
たとえば、電車運転士という職務の場合には、「電車運転士職務分掌マニュアル」となる。