問題解決アプローチ026

講師:蒔苗昌彦

当項026では、問題解決の進行のスピードアップを図る働きかけ複数をまとめて記します。繰り返しますが、記載した働きかけすべてを当研修で行うわけでないことをご了解下さい。受講者による問題解決の進捗状況を観て、適宜抜粋して行います。また、以下には、すでに記述済みの別項と重複した記述もありますのでご了解ください。

進行スピードアップを図るために

① 仮説を活用する

無条件で言うならば、問題構成要素をすべて事実確認した上で対策を検討できるに越したことはありません。しかし、当研修で題材として扱う貴社の「問題」は、専門情報・専門知識・専門技術等が十分揃っているにもかかわらず解決行動が停滞している重大な「問題」です。そうした「問題」は単純ではなく、複雑なはずです。そうした重大で複雑な問題においては、問題構成要素が非常に多くなるはずで、すべての要素について事実確認をすることは不可能、もしくは、可能としても事実確認するための時間、費用、要員などの累計は膨大になるでしょう。だから、仮説を活用して暫定的判断をすることで、問題解決の進捗の停滞を避けましょう。ただし、節目節目で確定的な判断をする時は、事実確認がどうしても不可能と結論した時にのみ仮説を用いることとしますが、その際にはそれが仮説であることを明記します。

 

②「箇条書き的発言」を活用する

文書を分りやすく表記するための一つの方法として「箇条書き」があることは皆さんご存じと思います。で、ここで言う「箇条書き的発言」とは、複数の項目、要素等を口頭で述べる際、文章の箇条書きのようにして発言をすることを言います。たとえば、複数の原因を述べる際、「その原因には、A:○○とか、B:○○とか、C:○○とかも考えられるし、え~っとその他にも、条件甲のもとでは、D:○○という原因も考えられるのではないのかなあ~」といったように、いわばダラダラとした形式で発言するよりも、「その原因は次の4つだと私は判断します。それはA:○○。B:○○。C:○○。D:○○、です。なお、Dは条件甲を前提します」といった形式で発言したほうが、情報伝達の効率が良く、ディスカッションの進行のスピードアップに寄与します。なお、この「箇条書き的発言」を行うためには、発言を開始する前に、頭の中で発言内容を整理し手元のメモに箇条書きした上で、それを読み上げる形で発言することをお勧めします。裏を返せば、こうして事前に整理していない状態で発言すると、ダラダラとした発言になってしまう可能性が高いです。ですので、事前にメモする間もなく発言の指示を突然受けた場合を除き、「箇条書き的発言」を活用しましょう。

 

③ 二者択一法を活用する

人間は、多数の選択肢の中から一つを選ぶ判断に比べ、二つの選択肢から一つを選ぶ判断(二者択一)のほうが早くできます。しかし、当研修の題材とする複雑かつ重大な問題には、問題構成要素が数多くあるはずです。
そこで、お勧めするのが、、、
・或る一つの要素と、それ以外の要素(複数)の二つに分け、一時的に前者だけに集中してそれを選ぶか否かを判断し、それを選ばなかった場合には、それ以外の要素の中からまた或る一つの要素に一時的に集中してこれを選ぶか否かを判断する、、、
という方法を反復するやり方です。このやり方をすれば、たとえば選択肢がa、b、c、d、e、f、g、hと多数あった場合、「え~っと、aにしようかなあ、それともbにしようかな~、いや、cにしようかな、いやそれともdにしようかな、それともeかな、fかな、gかな、hかな」といったような迷いを避けられ、判断にかかる時間が短縮できます。なお、この方法についてはさらに詳しく、事例-005で説明してあります。

 

④ ラフな進め方で強引に進める

何度も繰り返しますが、当研修で題材として扱う貴社の「問題」は、専門情報・専門知識・専門技術等が十分揃っているにもかかわらず解決行動が停滞している重大な「問題」です。そうした「問題」は、単純な「問題」ではなく複雑で、問題構成要素が非常に多いはずです。だから、一つの一つの要素に関する判断に長い時間をかけていては、その問題解決は再び停滞してしまいます。停滞を避けるため、節目節目に確定的な判断をする時を除き、ラフな進め方で構わない時はラフな進め方をしてでも強引に進行させましょう。ちなみに、ここでいう「節目節目」の時、つまりラフな進め方をしてはならない時とは、どのような時でしょうか? まず抽象的に言えば、「その時点よりも前に戻って検討し直すことはしない、と意思決定した時」です。具体的には、対策を検討する要素(複数)の優先順位を確定する時、それぞれの対策を確定する時などです。そうした時には、ラフな進め方はせず、熟慮の上で判断しましょう。なお、ここで言うラフな進め方には、仮説をもとに暫定的に判断をすることも含みます。

 

⑤ 会議等の際の注意点

重大複雑な問題解決の過程では、随所で会議(または打ち合わせ、協議等)が行われ、その回数は非常に多くなります。それら会議等が長引けば、問題解決に向けた全体時間も長くなり、その結果、解決行動が鈍くなり、最悪、問題解決が挫折することになります。だから、会議等の際には次に列挙した注意点を意識し、会議等の進行を早めるようにしましょう。なお、次に列挙した注意点は、皆さんも日頃から痛感していることでしょうから、個々の解説文は省きます。

・議事進行役を明確にする
・他者の話をやたら遮らない
・なるべく挙手の上で発言する
・Yes or No or 判断留保、を表明する
・判断留保の場合は、判断権を他者に委ねる
・「どちらでも良い」という回答はしない
・「あるかもしれないが、本当にあるかは分からない」といったような回答はしない

次に列挙した注意点も、日頃の会議等にて、他の人を反面教師としてお気づきになっているでしょうから、個々の解説文は省きます。これら注意点を守らないと、最悪、実際の「問題」そのものについての議論が全く行われないまま会議が時間切れとなってしまいます。

・学術的な分析論に終始しない
・総論に終始しない
・一般論に終始しない
・喩え話に終始しない
・いわば「美学」を論じない
・個人的な心情を吐露する性癖はやめる

次に列挙した注意点は、会議等の時間が長引くことの防止が主眼ではありませんが、社内の会議等をする上で、当然の心がけです。

・反論異論を唱える際には、必ずその理由を言う
・反論異論も一つの可能性として尊重する
・個人的な好き嫌いを理由としない
・他者の対策案を否定する場合には、代替案を提示する
・他者を萎縮させるような態度を禁じる
・お互いに、理解させよう/理解しよう、との努力を怠らない
・会議体は成果を出すためのチームであると心がける


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