パート2・セクション10「手順以外の情報の整理」

職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方
10‐1「基本的な考え方」

文章以外の形態の情報(図表や帳票、写真等)は、冊子化の際に、「作業手順書」のパートには入れない。※1 1情報・1ページとし、「資料」のパートの中に入れる。そして、手順書のページの「註」に、参照すべき「文章以外の情報」が存在する旨と、その資料番号を記述しておく。

文章情報を文章情報だけで管理するのであれば、単純なワープロ機能だけで情報管理でき、容易に改訂できる。また、図表や帳票、写真等の情報を独立させ、1情報・1ページで管理すれば、改訂の際には、そのページを丸ごと差し替えるだけで済み、改訂が容易である。

今やパソコンによる版下作成が普及定着し、文字情報と図表等の情報を一つのページに組み合わせてレイアウトをするのが、容易になった。しかし、そうであっても、文字ページは文字だけ、図表情報は図表だけとしたほうが、改訂が容易である。※2


10‐2「図」

職務分掌マニュアルで提示する図の情報として、機械・器具類の仕様や操作の図解がある。この際の注意点は、「図解は機械・器具類の仕様や操作を忠実に描写していなければならない」という点である。とはいえ、写真と見まちがえるほど写実的に描写しなければならないわけではない。陰影を省略したモノクロの線画として描写した図解がむしろ適切である。

極端な遠近感をつけることや、漫画のようにデフォルメすることも避ける。操作の仕方として、人間(または人間の手)と機械・器具を絡ませて描写する場合には、相対的な大きさの関係を忠実に描写した図解とする。いずれにしても、これら条件を満たすためには、作図・作画のプロに依頼をする必要がある。


10‐3「写真」

図解は忠実とすべきという前項の説明から、「図解はやめ、すべて写真で解説したほうがよいのでは?」という考え方も起きよう。この考え方自体は妥当だが、写真の場合には、撮影時の適切な照明が必要である。照明が不適切であると、実際に目で見た雰囲気とは掛け離れた画像となり、正確な情報伝達とならない。写真撮影に適切な照明を得るためには、大掛かりな照明機器が必要な場合もあり、プロの写真家に依頼をする必要がある。※3

プロの写真家に依頼する場合は、そのプロのランクと撮影対象物の物理的特性にもよるが、写実的なモノクロ線画作成より、写真のほうが高くつくこともある。予算と効果を照らし合わせ、選択して欲しい。


10‐4「帳票類」

文章以外の情報で、それが規定として発せられる可能性が最も高いのは、帳票類である。作業を行う上で使用しなければならない帳票類は、職種に関係なく、存在する場合が多いと思う。帳票類は、それ自体がすでに見やすく設計されているはず。もちろん、勝手に変更してしまうこともできない。したがって、複写してそのままページに貼り付けるだけとする。
なお、記入例を入れておけば、理解の助けになる。


10‐5「その他の情報」

前述の図・写真・帳票類の他にも、文章以外の情報として、職務分掌マニュアルに掲載すべき場合があるかもしれない。その場合も、図・写真・帳票類と同じように扱うこととし、資料パートに組み込む。その際も1情報・1ページとする。


10‐6「別冊資料一覧」

そのまま使用できる冊子やネットワーク情報がある場合には、それを職務分掌マニュアルに取り込む必要性はないし、取り込んでもならない。職務遂行に有効であるからと言って、あらゆる情報を取り込むと膨大な文書になってしまい、扱いづらくなるからだ。

職務分掌マニュアルに取り込むべき情報は、その職務固有の情報で、かつ、職務責任・職務権限を明確にする上で必要な情報である。これに的を絞ることが大切だ。

したがって、たとえば、市販の図書に記載されている一般論的情報は、たとえ職務遂行の上で参考になる情報であっても、職務分掌マニュアルには取り込まない。使用する機器の取り扱い説明書等についても同様である。※4

しかし、参考になる情報を眠らせておくことはない。そこで「資料」のパートの最終ページに、「別冊資料一覧表」のページを設け、そこに文書名と保管先を箇条書きで記載しておく。所在を分かるようにしておけばいいのである。


※1:
手順のすぐ脇に図表の情報が掲載されているレイアウトは、資料ページをわざわざめくる必要がないという点で親切と言えるだろう。しかし、これはあくまでもその情報が改訂管理されているという前提に立っての話。この前提が確保できないのであれば、親切さも成立しない。

※2:
手順のすぐ脇に図表の情報が掲載されているレイアウトであっても、一時的ならば、改訂管理は可能かもしれない。しかし、継続的には不可能、と私は判断している。

※3:
アマチュアが、外光の全く入らない屋内で、カメラに付帯しているストロボを使って物品・機械等を撮影した場合、人間の目で直接見た感じとかけ離れた画像となってしまうことが多い。こうした画像でも充分参考になるのか・否か。事前に職務分掌マニュアルで見た印象が先入観となり、いざ現場に行ってみて、その食い違いにより混乱することになるか・否か。その都度、慎重に検討すべきである。

※4:
市販図書等やインターネットで公開されている情報は、著作権法の観点からも、不用意に取り込むことができない。引用の場合には出典・著者氏名を明記しておくこと。転載の場合には、著作権者の許可を書面にて得ること。ちなみに、当講座の情報も、受講者がWebを通じてパソコンのモニターで閲覧することに限って公開している。それ以外の使用(二次使用)は書面での契約を必要としている。


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