セクション8「おわりに」

冒頭でも述べたように、当講座は、あくまでも別講座「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」 を補足するための講座で、職務分掌マニュアルの主要構成要素となる「作業手順書」の形式について具体的なイメ-ジがつきやすいように、作業手順書の書式サンプルを示すことが目的である。

しかし、書式サンプルとして扱った作業手順書が、火災対応という深刻な状況を想定した作業手順書であるだけに、形式の書式サンプルを示すことに留めず、火災対応そのものについての私なりの見解を紹介した。

だが、私は消防官の経験も消防団員の経験もない。本火災の消火活動の経験もない。それにもかかわらず、火災対応の手順書をサンプルながらも提示したうえ火災対応についての考察も紹介したわけだが、こうした行為は火災の専門家がすべきことだという理由にて、私の行為を訝しく思う人もいよう。

しかしながら、「もし私が施設の経営者であるならば火災対応手順をこう定める」と想定することは決して不健全ではないし、実際に施設の経営者となったならば、火災対応手順を定め従業員を指導する義務が発生する。

「個々の施設の火災対応手順までをも、消防署が作成してくれるのでは?」と思っている人にたまに出逢うが、個々の施設の火災対応手順書は、個々の施設の経営・運営に責任を持つ者が、その権限により作成して構わないものである。「消防官・消防団員の経験はないし、本火災の消火活動の経験もない」という理由で、火災対応手順書の作成が禁じられているわけではない。

それに、そもそも火災は絶対に発生させてはならず、しかし、いつ発生しても対応できるように準備して置かなければならないものである。だから今まで本火災の消火活動の経験が一切なくてもそれはむしろ当然であり、しかし、万一発生したらこう対処しようと常に想像を巡らすことも当然のことなのである。

二律背反のように感じる人もいるかもしれないが、ともかく、火災に限らず危機管理においては当たり前の姿勢として、「経験がなくとも想像する」「絶対発生させてはならないことであっても発生を想定した対処法を考え、いざという時のために備えておく」ことを身につけて頂きたい。

また、自らが主体的・積極的に判断することで責任を引き受け、かつ、責任を全うするために振るうべき時には権限をしっかりと振るうことを、お客様の命を預かることになる業務の経営者や運営責任者には特に強く勧めて、とりあえず当講座のおわりとしたい。

文責:蒔苗昌彦

<火災対応手順書の書式サンプルについては以上でおわり>

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