問題解決アプローチ006

講師:蒔苗昌彦

問題構成要素の悪影響をそれぞれ確認しよう!

別項でも述べた通り、「問題」への対処の基本的アプローチは、「問題」の「原因」を掴み、「原因」と「悪影響」の関係を「遮断する」もしくは「悪影響」の度合いを減少させることにあります。したがって、問題構成要素を掴んで着手優先順位を決めた後、要素ごとの「悪影響」を確認します。確認結果はエクセル表の右列に追記します。または、順位を決める前にそれぞれの「悪影響」を確認し、その後に順位を決めてもよいです。

では、「悪影響」とは、具体的にどのようなものでしょうか?

別項にて学生でも分かるほど易しい仮想事例として「会議室が暗い」という問題を紹介しましたが、この問題による悪影響としては、たとえば「議論が活性化しない」「暗い発想になる」「眠くなる」「資料が読みづらい」「来客者との打ち合わせ場所として使用した場合に心象が良くない」などが想定できます。

また、別の仮想事例として「会社が大赤字」という問題をあげました。そして、それを分解し「魅力のある広告宣伝ができていない」「新規製品開発に力を入れていない」「製造過程の詳細な分析ができていない」「事務部門の職務分析がされていない」「セールス部門の販売力向上のための研修内容が陳腐化している」「組織力を活用したセールスができていない」等の問題構成要素を想定しました。これらについては、それぞれ次の悪影響が想定できます。(右向き矢印の先に「悪影響」を記述)

・新規製品開発に力を入れていない → <悪影響>そのため新しいヒット商品が生み出せない

・製造過程の詳細な分析ができていない→<悪影響>そのため生産効率を高めるための方策を打てない

・事務部門の職務分析がされていない→<悪影響>そのため要員や職務のダブつきがある

・セールス部門の販売力向上のための研修内容が陳腐化している→<悪影響>そのため販売機会を逃している

・組織力を活用したセールスができていない→<悪影響>そのためセールス担当者個々の気力に過剰依存しているが個々の気力には限界がある

上記の想定をよくご覧頂くとご理解頂けると思いますが、悪影響としてあげた項目は、それ自体が「問題」でもあります。それゆえ、さらにその問題を分解し、構成要素を列挙する必要が出てきます。そしてまた、列挙した要素ごとの悪影響を確認する必要が出てきます。そうやって問題の分解に分解を重ねていくと「小単位の問題」が膨大な数になり、それら全部を検討しているうちに時間が過ぎ、会社は倒産してしまうかもしれません。だからこそ、別項で述べたように、会社が大赤字になる以前に、日頃から小単位の問題の解決に取り組むことが大切なのです。

「悪影響の確認」という行為の副次的メリットとして、問題として提示された事項が、本当に問題なのか・深刻な問題なのか/否かを確認できます。

たとえば、「社員食堂のメニューのバリエーションが少ない」という事実が問題として提起されたとします。無条件で考えれば食事のメニューのバリエーションが多いほうが良いでしょうから、この事実が問題として提起されることは想定できます。しかし、その悪影響を確認したところ、特に深刻な悪影響が確認されなかったならば、それを問題として扱う必要はありません。

ですが、もしその悪影響として、例えば「メニューのバリエーションが少ないため『食べ物の恨みは恐ろしい』の文言通り、臨時従業員の不平が多く、契約期間以前に次々と退職してしまうため、入れ替わりが激しく、頻繁に募集、初期研修をしなくてはならない」という事実が確認されたとしましょう。もしこの想定ケースが、正社員の何倍もの人数の臨時従業員を雇用しなければならない業態でのことならば深刻な問題と言え、早急な対応が必要です。メニューのバリエーションを増やしてでも、退職者を減らしたほうが得策です。

以上のように、緻密に問題に対処するためにも、問題の深刻度合いを見誤らないようにするためにも、悪影響の確認は必要です。だから、「○○という問題がある」という意見が出たら、すかさず「その悪影響は?」と考える癖をつけることは良いことです。

ちなみに、社員数が多く、かつ、年功序列が悪いほうへ作用している会社では、そもそも問題ではない課題、たいして深刻ではない問題などを取り上げては、それがあたかも大問題であり緊急課題であるかのように声高に強調する人を、次長とか部付き部長クラス、場合によっては取締役にさえ見かけることがあります。このクラスの人が提起した問題なだけに、現場の一般職が提起した深刻な問題よりも着手優先順位があがってしまい、深刻な問題への対策が後回しになってしまうことがあります。しかし、「悪影響の確認」というステップを踏めば、提示された課題が、本当に問題として扱うべきものか否かが検証でき、提起した人にも冷静に判断して頂け誤った判断を避けることができるでしょう。


<ポイント>

・問題構成要素を掴んで着手優先順位を決めた後、要素ごとの「悪影響」を確認し、エクセル表の右列に追記する。

・順位を決める前にそれぞれの「悪影響」を確認し、その後に順位を決めてもよい。

・悪影響としてあげた項目は、それ自体が「問題」でもある。

・悪影響の確認をすると、それが本当に問題なのか・深刻な問題なのか/否か、を確認できる。


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